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第14話:異国の鳥
イラスト:わたなべふみこ
 
 
   ツピちゃんは、お姉さんが、お皿に置いてくれるミルワームを食べることにしました。
あの強制給餌がいやだからです。その様子を見て、お姉さんは、安心して、
もう2度と強制給餌はしませんでした。そして、怪我の治療するとき以外は、
ツピちゃんの気をつかってか、そんなに覗き込むこともしませんでした。

ツピちゃんは、元気がでてから、オオバタンの翔ちゃんが、ちょくちょく、
ツピちゃんのいる部屋に入ってきて、話相手になってくれました。翔ちゃんは、
日中は、家の中を部屋から部屋へ自由に歩き回っているみたいです。
ツピちゃんが、不思議に思ったのは、移動は、足で歩くのがほとんどで、
翼を使って飛ぶのは、机や椅子の上に移動するときぐらいでした。
ツピちゃんがそのことを聞くと、翔ちゃんは、肩をすくめただけで、何故だかは
話してくれませんでした。

「猫に気がつかないなんて、野生の鳥は、もっと注意深いと思ったのに。」
翔ちゃんは、ツピちゃんにいいました。
「燕さんが去る前に聞きたいことがあったんだ。つい、急いでしまって。」
「何を聞きたかっただい。」
「僕が夢に見た鳥について知らないか聞いてみたかったんだ。」
「へぇ~、どんな鳥」
「翔ちゃんは、知らないと思うよ。」とツピちゃんはちょっと躊躇してから
続けました。「だって、翔ちゃんは、この家の外へ出て行かないみたいだし...
もっとも、翔ちゃんみたいな姿をした鳥は、今まで会ったことがないけど。」
「そりゃそうさ。」翔ちゃんはいいました。「僕の仲間は
そもそもこの土地の出身じゃないから、外の世界で、自由に飛び回って
いないよ。僕自身は、最初から、人間の手で育てられたから、外の
世界も知らないけどね。」
「この家から出て行こうと思わないの。」
「外の世界のことは、知らないから。もし、僕の仲間が外の世界で自由に
していたら、ちょっとはあこがれたかもしれないけど。現実は、
そんなことはないからね。」翔ちゃんは、そういってから付け加えました。
「僕は、お姉さんのこと、大好きだから、離れたいと思わないし。」
「そんなものなのかな。自由に飛び回るって重要なことと思うけど。」
「そんなものさ。」翔ちゃんはいいました。「そんなことより、
夢の鳥の話をしてよ。」
「うん、こんな鳥なんだ。」ツピちゃんは、翔ちゃんに夢に出て来た鳥の
話をしました。

「ほー。確かに僕自身は、そんな鳥に会ったこともないけど...」
と翔ちゃんは、いいました。「でも、お姉さんとテレビを見ていたら、
ニューギニアというところには、いろんな鳥がいるそうだよ。
なかでも、ゴクラクチョウという鳥は、君がいっている鳥に
ちかいんじゃないかな。」
「ゴクラクチョウっていうの。」
「うん、でも、神秘的には見えなかったな。やっぱり違うか。それよりも
人間が想像したという鳥の方が近いや。」
「え、人間が想像した鳥! でも、僕は、鳥だよ。」
「鳳凰という鳥なんだ。ものすごく美しい鳥で、特別の時しか
姿を表さないだって。人間は、その鳥を尊敬していて、いろんなところに
その鳥の姿を描いたり、彫刻したりしているんだけど、テレビでは、想像の鳥と
いっていたよ。」
「ところで、」ツピちゃんは聞きました。「テレビって何?」