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第4話:落ちる!!
イラスト:わたなべふみこ
 
 
  弟を送り出した後、いよいよツピの番です。
羽根が生えそろう前からはばたきの練習をしてきたんだ。
先に出て行ったお兄ちゃんたちよりもうまくに飛べるはすだ。
ということで、いきおいよく、穴のふちに飛び乗りました。
しかし、いきおいがありすぎて、前につんのめり、今にも落ちそうになりました。
「危ない!」という声がしました。
ツピにはそれが誰の声がわかる余裕はありません。

今、自分は、なんて高いところにいるのだろう。
さっき、落ちていたらどうなってしまったのだろう。
ペッシャンコになってつぶれちゃうのかな。

ツピは、生まれて初めて恐怖というものを感じました。
震えが止まりません。さっき、弟にあんなにえらそうに いっていたことが嘘のようでした。

「どうしたんだ。早く飛んでこいよ。」
「置いてちゃうよ」
「お兄ちゃん、がんばって」
「僕も飛べたんだよ。お兄ちゃんはあんだけ練習していたんだから 大丈夫だよ。」

ツピは、外の世界がぐるぐる回っているように見えて 一歩も踏み出せません。

お母さんが、巣箱の屋根に飛んできました。
「お母さん、怖いよ。僕、飛べると思っていたのに...」
ツピは泣き声でいいました。

「ツピちゃん、私達、小鳥は大きな鳥と違って、羽を動かしていれば 飛べるのよ。
地面には落っこちないわ。」
ツピちゃんは、下を見てばかりいて、なかなか動けません。

「ツピちゃん、ツピちゃんには夢があるのでしょ。飛ばないと 夢を実現できないわよ」

そう、あの美しい鳥に会うんだ。そのためには飛ばないと。

ツピは、ようやく決心すると、大きく深呼吸をしてはばたきました。
しかし、目はつぶってしまいました。

確かに、始めは、落ちそうな気がしました。だけど、よりいっそう 羽を動かすと、
上昇しているような気がしました。

「危ない!」

はっと、目を開けると木の枝が迫ってます。
半分、ぶつかりながらも、なんとか枝に止まることができました。

「おめでとう」

兄弟たちの声がします。

巣の中では、あんないひとりではしゃいでいた自分が、
一番、みっともない巣立ちでなさけなかったです。

でも、はじめて、飛んだことに感動してきました。

そう、これから、もっともっと飛ぶ練習をしないと。
あの鳥に会えない。