鴛【おしどり】 †
保元年間(1156〜59)のこと、殺生を好む平真円という男がいた。ある時、阿蘇沼で仕留めたおしどりを持って家に帰ると、その晩、女性が家を訪ねてきた。そして、「今日、あなたに夫を殺された」といって、嘆き悲しむ。真円が、見に覚えないと反論すると、女は、「日くるれば誘ひしものを阿蘇沼の まこもがくれの一人寝ぞうき」と言い残して姿を消した。翌朝、真円は、昨日仕留めた雄のおしどりのくちばしに自らのくちばしを合わせて死んでいる雌のおしどりを目にする。昨晩の女性は、おしどりの雌であった。このことがあってから、真円は改心し、出家して寺を創建したという。 週刊「日本の伝説を旅する−房総」12頁より |